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情動認知発達学領域

注意欠如・多動症(ADHD)は年齢に不相応な不注意(気が散りやすい、不注意な間違いが多い)、多動・衝動性(落ち着きがない、我慢をするのが苦手)の症状を主徴とし、自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションの問題・限定的、反復的な行動、興味を主徴とした、神経発達症である。これらの神経発達症とトラウマには密接な関係があり、神経発達症児はトラウマの最たるものである虐待のリスクが高い一方で、虐待に起因する愛着障がい(RAD)は時に神経発達症に似た症状を呈することが知られている。また、ADHD、ASD、RADはいずれも二次障害としてうつ病や不安症などの精神疾患を発症するリスクが高く、早期診断・早期介入およびその病態メカニズムの解明は重要な課題である。

本領域では、ADHD、ASD、RADを中心に、MRI等の非侵襲的画像検査法により、ヒトの脳構造/脳機能を可視化し、その神経基盤の解明のみならず、臨床に資する病態に基づいた生物学的マーカーの開発を目指して研究に取り組む。研究を遂行するためには、小児発達学、児童精神医学、放射線医学、心理学、神経科学、情報科学、教育学などの幅広い分野における高度な知識、技術が必要となるため、様々な分野、背景をもった研究者と連携し、研究を進める。それと同時に、約12000名もの子どもの脳画像・遺伝子・行動データを縦断的に集積している米国の大規模研究、ABCD (Adolescent Brain Cognitive Development) studyをはじめとしたデータベースを有効に活用し、さらに、連合大学院を基盤とした多施設共同研究による独自のデータベースを構築し、独立したサンプル集団においても、再現可能な結果を追求する。

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発達環境支援学領域

子どもたちのこころの健康の維持は、21世紀の最も大きな課題の一つとして注目されつつある。近年、児童虐待や子どもの心身症、発達障がいなど、いわゆる”こころ”の問題解決への社会的要請が強まっている。児童精神科領域とされるこれらの問題は、実際には精神科や小児科の合間にあり、未解決の問題が山積している。特に昨今、医療機関への受診が急増している発達障がいに対しては、その実態と要因を探ることは急務である。

子どものこころの発達は、先天的・後天的な様々な要因が複雑に絡み合う中で規定されているが、その中で、我々は子どもの脳に関わる影響に注目している。ヒトの脳を可視化する技術が進歩し、非日常的または日常的な様々なトラウマ体験の生物学的影響が脳にもたらされることが解明されてきた。

”こころ”の問題解決を実現するために、脳機能イメージングや神経心理学的手法を駆使した、脳科学を基盤とする学際的な研究を推進する。発達障がいの生物的なリスク要因を早い段階で認識すれば、予防や治療へつながる可能性が高まる。脳が外界環境の強い刺激により影響を受けるという事実を前提に、臨床医・基礎研究者・地域が連携する中で研究を進め、教育・療育方法の新たな開発を進める。

さらに、環境が小児のこころの発達に及ぼす影響についても多面的な研究を展開し、難治とされる脳機能疾患の治療・予防を可能にするために取り組む。

研究内容に関するお問い合わせ
(友田明美 教授)
子どものこころの発達研究センター(発達支援研究部門)
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脳機能発達学領域

分子・細胞レベルでの解析を中心に脳機能の発達の仕組みの解明、ひいては行動レベルの理解を目指した研究を展開する。

分子や細胞レベルのメカニズム解明が進むと、脳の働きを具体的に理解できるようになる。そのため「子どものこころの諸問題」を脳の仕組みの破綻として捉えることで、発達期特有の疾病もしくは障害の新たな理解や従来にない診療手段の開発に結びつくことが期待される。本研究領域では、以下の研究のテーマで研究を遂行する。

(1)自閉症診断に応用可能な生物学的マーカーの探索研究。自閉症者から得られる血液・毛髪検体や自閉症者の脳画像の所見を基に、疾患特異性のある体内分子動態を探索する。

(2)モデル動物を用いた自閉症の病態研究。(1)での所見を再現するモデル動物を作成あるいは利用して、病態メカニズムの理解を進める。主に自閉症にみられる血中脂質代謝・脳内セロトニン伝達系の特異的な異常に焦点を当てた研究を展開している。

(3)心理・行動科学領域における生体リズム研究。子どものこころの発達におけるひずみと、睡眠や食事時間などの生体リズム障がい・体内時計異常との関連性についての研究を進める。

研究内容に関するお問い合わせ
(松﨑秀夫 教授)
子どものこころの発達研究センター(脳機能発達研究部門)
TEL:0776-61-8803
FAX:0776-61-8804