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脳機能発達研究部門

本研究部門では、こころの形成・発達の基盤である「脳の発達の仕組み」を分子・細胞レベルで解明する基礎研究に加え、主に自閉スペクトラム症(ASD)を対象に橋渡し研究・臨床研究活動を行っている。

浜松医科大学との共同研究により、臍帯血出生コホートを用いた発達指標を見出す研究を行っている。特に、出生後のASD特性と相関する臍帯血中アラキドン酸由来ジヒドロキシ脂肪酸diHETrEについて、diHETrEを生じさせる代謝酵素sEHの臍帯血中動態を調べる国際共同研究や、ASD特性の早期判定におけるdiHETrEの有用性の検証を進めている。
当研究室が独自に開発したN-ethylmaleimide-sensitive factor(NSF)遺伝子のヘテロノックアウトによるASDマウスモデルを用いて治療シーズの開発研究を続けている。
和歌山県立医科大学、浜松医科大学、弘前大学、群馬大学、国立成育医療研究センターとの共同研究でASD児の死後脳縫線核に特異的な遺伝子メチル化探索を行い、新しいASD関連遺伝子を発見した。
ミトコンドリア機能低下の機能向上を図るサプリメントがASD症状の改善に有効かを検討する特定臨床研究(jRCTs051210168)」を実施した結果に基づき、有効な児童のタイプを明確にする層別化研究を進めている。ほか、MRSを用いて還元型グルタチオンのASD者脳内レベルを探索し、ミエリン化に結びつくASD特有の関連パターンを見出した。さらにASD児童を対象とした新規糞便微生物移植法の有効性と安全性を前向き単群前後比較試験で検討し、シングルアームで有効性を確認している。
ADHD者のPET研究では側坐核、尾状核、中脳でD2/D3R結合能の減少が知られている。D2Rを発現する神経細胞に特異的なNSFコンディショナルノックアウトマウスにADHD様行動およびドーパミンシグナル異常を見出した。現在Neuropsychopharmacology誌に論文を投稿し、改訂中である。
国立精神・神経医療研究センターとの共同研究により、耳介迷走神経刺激によるマウス社会性調節の試みについて研究を進め、迷走神経刺激(VNS)と消化管ホルモンに対する孤束核(NTS)ニューロンの反応を評価する方法が生体内で迷走神経-孤束核経路を研究する上で有用であることを実証した。
発達コホート・脳MRI画像研究・探究力の指標研究の3点を柱にした教育研究を遂行し、各指標の経年変化を追跡して、児童の成長に伴う探究力、発達特性、脳画像の相関を解析している。
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情動認知発達研究部門

本部門は、主にMRIを用いてヒトの脳の構造や機能を可視化し、神経発達症(主にADHDおよび自閉スペクトラム症)の理解と臨床応用の架橋を目指した研究を推進し、以下の3つのミッションに取り組んでいる。

  1. 神経発達症の生物学的神経基盤の解明
  2. 臨床応用可能なバイオマーカーの開発
  3. 新たな治療・支援法の開発と実装

これらのミッションを達成するため、以下の3つの研究戦略を柱としている。

連合大学院を基盤とした多機関共同研究により、独自の脳画像データベースを構築し、神経発達症の多様性を反映した高品質なデータの蓄積を進めている。これにより、詳細な病態理解や仮説検証を可能とする研究基盤を確立している。
さらに、全米21施設が参加し、約12,000名の児童を対象とした大規模縦断研究であるABCD(Adolescent Brain Cognitive Development)Studyをはじめとする国際的データベースを活用し、大規模サンプルに基づく解析を行っている。
これらのデータを相補的に活用することで、研究結果の一般化可能性(外的妥当性)および再現性の向上を図り、信頼性の高い知見の創出を目指している。

治療資源の地域差や専門医不足、医療機関へのアクセス制約といった課題に対応するため、オンライン診療やデジタル治療(セルフヘルプ型遠隔介入)の研究開発を推進している。これにより、時間や場所に依存しない形で、早期かつ継続的に有効な支援へアクセス可能な医療提供体制の構築を目指している。
さらに、これらの介入の有効性や作用機序を、脳画像や認知機能評価などの客観的指標を用いて検証することで、科学的根拠に基づく新たな治療・支援法の確立を目指している。

本領域の研究には、小児発達学、児童精神医学、放射線医学、心理学、神経科学、情報科学、教育学など、多分野にわたる知識と技術の統合が不可欠である。そのため、本部門では多様な専門性を有する研究者との連携を基盤とし、学際的な共同研究を推進している。
また、福井大学内の関連部局(医学部小児科学、精神医学、放射線医学、高エネルギー医学研究センター、工学部、教育学部)に加え、連合小児発達学研究科(大阪大学、金沢大学、浜松医科大学、千葉大学)や、Stanford University、Korea Brain Research Institute などの海外研究機関との連携を通じて、国際共同研究を展開している。これにより、研究の高度化と国際的な発信力の強化を図っている。

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発達支援研究部門

発達支援研究部門は、次世代を担う子どものこころの健康を積極的に支援するために設立された部門であり、国内外の研究者と連携して以下のような研究を行っています。

子ども虐待・ネグレクトなどマルトリがヒトの脳に与える影響や、エピジェネティックスに関連する研究を行っています。また、子どもの感受性期や発達状況を予測するためのモデリングを特定し、その成果を地域に活用する取り組みも進めています(米国スタンフォード大学、UCLA、中国ハルビン医科大学、韓国脳科学研究院との国際共同研究を展開中)。さらに、「マルトリ予防®」と「とも育て®」に関する研究や社会貢献活動も推進しています。

注意欠如・多動症(ADHD)児や自閉スペクトラム症(ASD)児、愛着(アタッチメント)障害児の脳構造・機能の特徴を脳画像で可視化する評価法の研究開発を行っています。

子ども虐待対策として、養育者のメンタルヘルス支援が重要です。科学的根拠に基づく養育者支援システムの構築やその成果の普及、専門家の育成を目指して、精神疾患予防を考慮したマルトリ予防モデルの研究を進めています。特に、養育者によるマルトリ予防®のためのセルフモニタリングシステムの構築と、保育士の実行機能に関する脳画像研究に取り組んでいます。

子どもへの虐待リスクを引き起こす子育て困難な養育者の脳やエピジェネティクスのメカニズムを解明し、虐待リスクを評価するためのバイオマーカーの開発を進めています。

神経発達症児の子育て支援プログラムが母親のストレスや親子関係の改善に与える影響、及びそのプログラムが親子の脳機能や脳構造に及ぼす効果を検証する研究を進めています。

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地域こころの支援部門

本部門は、福井県の要請をうけ、発達障がいやトラウマ関連障がいのある児童のライフスパンにわたった診療支援ができる専門医を中心に、地域の社会的支援・養護を要する家庭や児童への援助、地域に対する良質な治療の情報の提供、専門医の育成を目的として令和4年度に設立された。小児期から大人までの発達障がい・トラウマ関連障がいの支援モデルの開発、発達障がいやトラウマ関連障がいのアセスメントや治療に精通し、地域支援の行える専門医の育成・定着、地域の機関への医師派遣、医師・コメディカル・支援職員に対する研修の実施等、医療・療育体制整備の構築に向けて活動を行っている。
またレジデント研修のための場である福井大学医学部附属病院「子どものこころ診療部」の研修環境を整え、レジデントが各種の疾患を経験することができるような教育現場作りに力を入れている。全国で6番目の摂食障害治療支援拠点病院に指定された福井大学医学部附属病院「神経科精神科」では摂食症の症例を中心として週1回のスーパービジョンを行っており、摂食症の臨床を通じて得られた知見の一部を「はじめてのFBT実践ガイド」として厚生労働科学研究で報告した。杉山登志郎客員教授による月1回のスーパービジョンに加え、県立病院、こども療育センター、児童相談所および少年鑑別所、家庭裁判所等、院外での関係機関における研修の機会を充実させる役割も担っている。

また、本部門は福井県障がい福祉課により、県における精神保健福祉・コメディカルを含めたスキルアップに対する支援を求められている。教員による研修講師やスーパービジョンを、具体的には臨床心理士会、児童相談所、療育センター、ステップスクール、乳児院等で行っている。また、福井子どものこころの臨床研究会の運営にも携わり、情報交換の場を定期的に提供している。

さらに、本部門の地域精神医療への貢献として、

  • 福井大学医学部附属病院子どものこころ診療部における外来診療
  • 福井県立病院こころの医療センターにおける外来診療
  • レジデントが開業したクリニックにおける診療
  • 福井県こども療育センターにおける診療
  • 福井児童相談所における嘱託医業務

などで診療活動を行っている。また、福井県こども療育センターにおいては、保護者向けの学習会を実施している。

研究に関しては、発達障がいの一つである注意欠如多動症の症状を評価する質問紙であるADHD-RS-5日本語版を開発して、マニュアルを出版、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、それらに伴う併存症を診断する構造化面接であるK-SADS-PL-5日本語版を開発して、その出版を準備し、コンピュータ版であるKSADS-COMP日本語版について多施設共同で開発を進めている。また、工学部と共同で、トラウマ関連障がいに対するウェアラブル治療機器の開発を行っている。

TEL:0776-61-8279
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マルトリ予防学研究部門

本研究部門では、国内外の研究者と協働し、以下のような研究を行っている。

私たちは、子どもへの不適切な養育(マルトリートメント)が、子どもの心や脳の発達にどのような影響を与えるのかを、分子生物学や脳画像研究を用いて明らかにしています。

さらに、研究で得られた知見をもとに、子どもや家族を支えるための支援方法やICTツールを開発し、医療・教育・地域社会の現場で活用できる形へとつなげています。

「子どもの育ちを守り、安心して子育てできる社会の実現」を目指した研究です。

私たちは、妊娠・出産期から乳幼児期まで、途切れることなく保護者を支える子育て支援システムの構築に取り組んでいます。

また、その支援が保護者の安心感や親子関係、子どもの健やかな発達にどのような効果をもたらすのかを科学的に検証しています。

すべての親子が安心して子育てできる環境づくりを目指した研究です。