ASDの発症には妊娠中の母体免疫活性化が影響していると言われています。一方、多価不飽和脂肪酸のcytochrome P450(CYP)経路では抗炎症性の工ポキシ脂肪酸と炎症性のジヒドロキシ脂肪酸が産生され、免疫システムに関わっています。CYP経路代謝物のASDへの関与はマウスを用いた研究で示唆されていましたが、ヒトでは未解明でした。
福井大学子どものこころの発達研究センターの松﨑秀夫教授と医学系部門看護学領域の平井孝治講師らは、浜松母と子の出生コホートを用いて、臍帯血中の工ポキシ脂肪酸とジヒドロキシ脂肪酸の各濃度が出生後の子どものASD特性と関連するかどうか解析を行い、アラキドン酸由来ジヒドロキシ脂肪酸の一種である11 , 12ーdiHETrEが、6歳の子どものASD特性の重症度と適応機能の双方に影響することを明らかにしました。本研究の結果から、臍帯血の利用によるASDの症候の顕在化に先立つ超早期判定の実現が期待されます。
本研究成果は、科学誌「Psychiatryand Clinical Neurosciences」に令和6年7月23 日(電子版)に掲載されました。