マルトリ児のメチル化年齢の加速と、行動・情緒の困難さと視線注視が関連

福井大学子どものこころの発達研究センターの落合恵子、西谷正太特命講師、友田明美教授を中心とする研究チームは、マルトリートメント(虐待やネグレクトなど、略してマルトリ)を経験した子どもたちのDNAメチル化年齢(mAge)と、彼らの行動や情緒的な問題、社会的な視線の向け方との関連について明らかにしました。

これまでの研究でも、マルトリが子どもたちの行動に与える影響は示されてきましたが、本研究では、マルトリが子どものDNAに与える影響を解明することを目的に、DNAメチル化年齢との関連を調べました。研究の結果、マルトリを経験した子ども(n=36)と、マルトリ経験がない定型発達の子ども(n=60)を比較したところ、マルトリ経験のある子どもではメチル化年齢が加速し、社会的視線では人物の目よりも口を注視する傾向が見られ、情緒や行動において困難さがあることが分かりました。

さらに、これらのデータをもとにした解析から、メチル化年齢の加速と社会的視線注視が、子どもの行動や情緒的問題に間接的に影響を与えていることが明らかになりました。今後、このDNAメチル化の研究が進むことで、マルトリの早期発見や、より簡便な方法での治療につながることが期待されています。

この研究の成果は、2025年5月30日付のPLOS ONE誌に掲載されました。

【論文の出典情報】

Keiko Ochiai, Shota Nishitani, Akiko Yao, Daiki Hiraoka, Natasha Y.S. Kawata, Shizuka Suzuki, Takashi X. Fujisawa, Akemi Tomoda. Behavioral and emotional difficulties in maltreated children: Associations with epigenetic clock changes and visual attention to social cues.

Published: May 30, 2025 https://doi.org/10.1371/journal.pone.0321952

 

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