子どもの行動チェックリストを用いた小児期マルトリートメント曝露の評価

牧野拓也院生(大阪大学大学院連合小児発達学研究科福井校)と西谷正太特命講師、友田明美教授(福井大学子どものこころの発達研究センター)らの研究チームは、子どもの行動チェックリストという、子どもをよく知る保護者が回答する質問紙を用いて、小児期にマルトリートメントを受けた子どもたちの特徴を包括的に明らかにしました。

マルトリートメント(虐待やネグレクトなど、略してマルトリ)を経験した子どもたち(以下、マルトリ児)32名と、マルトリートメントを経験していない子どもたち(以下、非マルトリ児)29名の子どもの行動チェックリストを比較したところ、8つの下位尺度のうち7つ(ひきこもり、不安/抑うつ、社会性の問題、思考の問題、注意の問題、素行問題行動、攻撃的行動)でマルトリ児は有意に高いスコアを示しました。このことは、マルトリ児が多くの困難を抱えていることを示唆する結果です。

次に、子どもの行動チェックリストの8下位尺度ならびに年齢、性別、IQの全ての組み合わせを用いて3つのマルトリートメントを予測するモデルを作りました。その結果、高い精度でマルトリートメントを予測するモデルが生成されました。子どもの行動チェックリストは心的外傷に直接的に触れることなく、これを予測できるという点で優れています。

最後に、子どもがマルトリートメントを受けた時期およびマルトリートメントのタイプ(身体的・心理的・性的虐待またはネグレクト)の情報を用いた分析を行いました。5歳時点でマルトリートメントを受けたことは、子どもの行動チェックリストのうち「ひきこもり」と「思考の問題」と関連することがわかりました。また、5歳から7歳までにマルトリートメントを受けたことは「身体的訴え」と関連していました。タイプ別では、身体的虐待は「身体的訴え」「非行的行動」と関連し、心理的虐待は「不安/抑うつ」「思考の問題」と関連していました。

この研究の成果は、2025年5月8日付のFrontiers in Child and Adolescent Psychiatry誌に掲載されました。

【論文の出典情報】

Makino, T., Nishitani, S., Takiguchi, S., Yao, A., Fujisawa, T. X., & Tomoda, A. (2025). Assessing childhood maltreatment exposure using the child behavior checklist. Frontiers in child and adolescent psychiatry, 4, 1493432.

https://doi.org/10.3389/frcha.2025.1493432

 

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