簡易型トラウマ治療プロトコールによる、複雑性PTSD患者への治療効果を検証
子どものこころの研究センター地域こころの支援部門の杉山登志郎客員教授、森本武志准教授、鈴木太准教授、同発達支援研究部門の友田明美教授、及び宮城県立こども病院の涌澤圭介発達診療科長らの共同研究チームは、簡易型トラウマ治療プロトコール(Traumatic Stress Protocol:TSP)を開発し、複雑性PTSD患者への治療効果を検証しました。
TSPは体性感覚的EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)、極少量の向精神病薬、漢方薬の三者併用療法です。長い期間と1回1~2時間はかかる頻回のセッション、高い費用と治療専門性を要する従来型の諸トラウマ療法に比して、TSPは約10分のセッションを2~3週間おきに行い3か月程で終了します。EMDR手技自体も簡便で、量を控えた薬物療法を含め、プライマリケア領域においても使用し得る安全性を十分に考慮されています。
本研究においては22名の複雑性PTSD成人患者への治療効果がトラウマ関連評価(Impact of Event Scale — Revised)、抑うつ気分評価(Beck Depression Inventory 2nd edition)、機能評価(Global Assessment of Functioning)を用いて検証されました。これら3評価指標にて優位な改善を認め、TSPの複雑性PTSDに対する治療効果が示されました。本研究の成果は、2023年7月にJournal of EMDR Practice and Research電子版に掲載されました。
Wakusawa K, Sugiyama T, Hotta H, Wada K, Suzuki F, Morimoto T, Tomoda A. Triadic Therapy Based on Somatic Eye Movement Desensitization and Reprocessing for Complex Posttraumatic Stress Disorder: A Pilot Randomized Controlled Study. Journal of EMDR Practice and Research (2023).
https://doi.org/10.1891/EMDR-2023-0014